2018.01.10

山口県宇部市。やはり市役所の近くに良い店あり。

夜の風もだいぶ冷たくなった今日この頃。先日は山口県の宇部市に宿泊しました。
北九州市から車で一時間ほどの距離にある宇部市は、毎月のように訪れているものの宿泊するのは年に一度か二度です。

宇部市のシンボルといえば世界的な化学メーカーである宇部興産の広大な工場。しかしその最寄駅であるJR宇部新川駅周辺の街は、あまりにも寂れているのです。
大きな工場の企業城下町にありがちなことではありますが、生産の海外移転やオートメーション化で、高度成長時代に比べると工場で働く人の数が何分の一にも減ってしまったことが主な原因でしょう。場所によっては昼間でも足を踏み入れることをためらってしまうような一角もあるのです。

そんな宇部の夜の街は、過去に何度かふらふらとさまよってみたものの、これというお店は見つからずじまい。
この夜はすでに時間も遅いし、車の運転で疲れたし、ラーメンとビールで済ませることに・・・。
のはずが、生ビールを2杯飲みほすころになると、

「せっかくの宿泊なのに、これで終わっていいのか?本当にそれでいいのか?」
という内なる声が聞こえてきます。
そんなわけでラーメン屋を出ると、自然にこれまであまり歩いたことの無いエリアの方へと歩みを進めます。
私の経験上、県庁や市役所など人の多い役所や、大きな病院の近くには落ち着いた感じの良いお店が見つかることが多いのです。


かなり歩いた後、宇部市役所の前へと到達しました。


Ube01_3しかし・・・。

ありゃ~。

周囲にはお店があることはあるのですがスナックばかり。
しかもほとんどのお店は看板に灯が入っていない・・・。

やはり今夜もダメか・・・。

と思った直後、真っ暗な通りの一角にほかと少し違う店構えのお店を発見しました。
Ube02 白い壁にスリットが入っており、そのスリットの奥には数々のグラスが並んでいます。
入り口近くに「竹」と書かれた小さな看板。
正面の壁は最近塗装されたようでもあるし、建物の裏のほうを見るとそのまま住居に続いているように見える。

悩む。

ちゃんとしたバーのようでもあるし、美容院かなにかであった店舗を改装して営業している”オバチャン・スナック”かもしれない。
さっきから見ていても客の出入りが全く無いので、店内の様子はわかりません。
入り口付近は照明が無く、開店前なのかもしれません。

しかしここまで歩いてきてしまったのだから、探検せずにホテルへ引き返すのももったいない。ひとしきり考えた結果、覗いてみることにしました。

こういうときに注意しないといけないのは、文字通り覗くように首から先に入ることです。勢いをつけて足から入ってしまうと体全体が店内に入ってしまい、

「ありゃりゃ、失敗した。」

と思っても引き返すことが出来ません。
首から入って覗き込めば、「すいません、間違えました」とか言って引き返すことも可能なのです。

木製の扉をよく見ると引き戸になっているようです。緊張しながら引き戸を開けてみます。

ガラリ・・・。

ワーオ!

Img_3332488 店内は中心に白木の美しいカウンターが置かれた、しっかりとしたバーの雰囲気。
先客はなし。四十代後半から五十代前半とおぼしきマスターが迎えてくれました。

まずは”ジン・トニック”をお願いし、改めて店内を観察します。

お店は比較的新しい感じですが、カウンターの厚さと美しさがただものではないことを物語っています。
ライムの香りをグラスの淵に丁寧に付けて作られたジン・トニックをいただきながら、マスターにお話を伺います。

非常に美しいカウンターは、その色や木目から日本の木材のように見えます。
店内には昔どこかで嗅いだことのある木の香りが薄く漂っています。

私:「この美しいカウンターは日本の木材ですか?」
マ:「はい、イチョウです。」
私:「ほぉ~それはスゴイですね。イチョウと言えば高級なまな板の材料ですよね?」
マ:「おお、よくご存知ですね。」
私:「実家の隣が神社でして、昔その神社のイチョウの大木の枝を伐採したときに、切り落とした太い枝を大工さんがまな板に加工して、近所の家に配ったことがあるんですよ。」
マ:「なるほど。」
私:「この木の香りも思い出しました。」
マ:「一生分の借金と引き換えに購入しました(笑)」

二杯目は”ホワイト・レディ”をオーダー。
シェイカーをセットするときに、それまでにこやかだったマスターの表情がキリリと締まったのが頼もしい。

聞けばこのお店は三年ほど前に開店。その前は小野田で長くお店をされていたそうです。
移転したのは宇部以上に寂れてしまった小野田ではさすがに商売が難しくなったという事情もあったようです。

マ:「カップルのお客様が一組しか入っていない夜は、(騒がしい客が入ってこないように)外の看板の灯を落としたりとかしていましたからね。」

というマスター。

素晴らしいお店というのはいつまでも記憶に残るもので、そんなお店に出会うと過去に行ったお店のことも思い出すものです。
この夜発見した「BAR 竹」で、いくつもの懐かしいお店を思い出しつつ、ゆったりとした時間を楽しんだのでした。

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2016.12.03

山口県周南市。やっと見つけたいいお店。

山口県周南市。
この街に訪れるようになって九年目になります。しかしこれまでかなり探検したにもかかわらず、コレという居酒屋に出会うことが出来ずにいました。

地元の人が、
「三十年前は東京より人が多かった。」
と言う駅前のアーケードはすっかり寂れてしまい、いわゆるシャッター商店街です。

夜になれば意外に多くの飲食店が軒を連ねるものの、この街の特徴は何しろ単価の高いお店が多いこと。
聞くところによると大手企業の主力工場が立ち並ぶため、バブル時代には持て余した接待費で飲む人が大量に訪れ、勢いお店の方も単価を上げた名残なのだとか。
結局のところ地元は人口減、出張などで外から来る人間は外に飲みにいかないということになってしまったようです。

押し黙ったような夜の街。

それでも年に数回の宿泊時にはアチコチ歩き回り、昨年の秋ごろやっと良いお店を見つけたのです。

飲み屋の灯もそろそろ途切れ途切れとなり、住宅やオフィスが多い暗がりに入ろうかという境界線のあたりに、そのお店「豆福」はありました。(良いお店はだいたいこのような場所にあるようです)
Photo 暗い通りにほのかにこぼれ出る暖かい照明。
入り口付近に置かれた看板には小さめの字で「本日のオススメ料理」。
端の方には日本酒の紙箱がいくつか置かれています。
料理はどれもひと手間かかっていそうな感じだし、日本酒の紙箱の置き方や数は控えめながら、銘柄はしっかりとしている。

むぅ、これは期待できる。

そう確信して初めて入った夜のことを思い出しつつ、この夜も扉を開けました。

カウンター4席と他にテーブル席。
これらをすべてを合わせて10席と小さなお店です。

「あっ、いらっしゃい。」と小柄でいつもニコニコしている大将。
私:「寒くなりましたね。」
大:「そうですね。いつもご出張の度に寄っていただいてありがとうございます。」

まずは”キリン・クラッシックラガー”の小瓶と、ツマミは”生湯葉わさび醤油”。
カウンターの上の壁には日本酒のラベルがびっしりと貼り込まれ、その中には最近貼られたらしきものもいくつか・・・。
こんなところにも研究を怠らない店主の姿勢が表れているような気がします。

ビールで喉を潤したら、湯葉の歯応えを楽しみつつ、温かい料理を探します。

私:「”海老芋と椎茸の揚げだし”の海老芋というのはなんですか?」
大:「海老芋というのは京都のお芋で、里芋の大きいようなものです。」
私:「ホウ、ではそれをお願いします。」

里芋は私の大好物の一つ、良いお店ではいろいろと波長が合うものです。

お酒は最初はスッキリ目を期待して”菊姫・山廃純米 鶴乃里”を選択。

「熱いですよ」と供された、”海老芋と椎茸の揚げだし”はボリュームもそこそこあり、海老芋を箸で分けながらモグモグと味わいます。
確かに里芋の一種だとうなずきながら”菊姫”をスッと。
糸を引くような香りが残る銘酒を口に含むたびに、石川のお酒に外れは絶対にないことを確認。
そして早くも次のお酒の検討に入ります。
オススメの日本酒メニューから選んだのは”雪の茅舎”

大:「飲んでいただきたいと思っていたお酒をピンポイントで選んでくれますね(笑)」
私:「昔は仕事で秋田(雪の茅舎の産地)によく行っていたものですから。」

海老芋をたいらげ、あとはゆっくりと飲みたいと思い、定番のオツマミから”牛肉のしぐれ煮”を選択。
ピリリと山椒の効いたその味に合わせるのは、”貴・特別純米 ふかまり”をぬる燗で。

静かな店内で美味しいお料理と日本酒を楽しみ、体も暖まったところで二軒目へと向かうことにしました。

大:「このあとはウィスキーですか?」とまたニコニコ。
私:「ハハハ、図星です。」

と答えてBARへと向かったのでした。

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2009.03.20

下関の夜。最後の一軒は・・・。

「BAR UNCHAINED」を出ると、ほろ酔い気分で駅の方へと歩き始めます。
そろそろ本格的な酒飲みタイムという頃なのに、相変わらず人影はまばら。
そんな静かな通り沿いに、これまた一軒のBARを発見。
FaithBAR FAITH」です。

閉ざされた扉は決してゴージャスではないけれど、何かこう良い感じのオーラが閉じ込められているような雰囲気が漂います。

扉を開けてみると、奥に長いバーらしい店内。

こちらも先客は無く、マスターはテレビを観ているところでした。

客の気配に気づいてテレビを消そうとするマスターに、

「あ、そのままで、気になっていたので。」と私。

他にお客さんもいないし、マスターと二人でWBCを観戦することにしました。

ここでも最初の一杯は”ジン・トニック

やや古めかしさの漂う店内。
こちらも良い雰囲気です。
お酒の種類も豊富で、マスターの話しも楽しい。

いいお店だ。

何杯か飲んだけれど、お会計も妙に安かった。

関門海峡を挟んでいるとは言え北九州市のすぐ隣に位置する下関市。

初めての訪問で3件とも良いお店に出会えたのは単なる幸運だろうか、それとも良いお店が多いのか・・・。

いずれにしても帰りの電車、関門トンネルの中で再訪を誓うのでした。

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2009.03.11

下関の夜、それから・・・。

「狐拍子」を出た後、下関の古い飲み屋街らしき方向へと向かいます。
大きな道が二股に分かれ、どちらにも道沿いにポツポツとお店があります。
ただし大通り沿いのお店は「食事処」的なお店が多く、ちょっと風情に欠けます。
そこで2本の大通りに挟まれた形の小さな通りに入ってみました。

1ホホ~ゥ。
良さそうな通りジャン。
暗くて人通りの少ない通りに、寿司屋から居酒屋、スナックやフーゾク店まで、あらゆる分野のお店がある。
しかし寂れているがゆえに、ゴチャゴチャした感じも無い。
人影の少ない通りを端から歩いてみた結果、一軒のBARを発見しました。

Photo暗い通りにポツンと灯る店の明かり。
看板には、「BAR UNCHAINED」とあります。
一部がガラスの扉の中をのぞけば、木の雰囲気が感じられる色合い。
何の迷いも無く、扉を開けてみます。

ギィ・・・。 

マスター:「いらっしゃいませ。」

私:「一人なんですけど。」

マ:「どうぞ。」 と、席へ促す。

まっすぐなカウンター席に先客はいませんが、一番奥は遠慮して、奥から三番目あたりの席へと腰を落ち着けます。

マ:「お飲み物、何にしましょう。」

私:「ジン・トニックをお願いします。」

バックバーを見ると、”ビクトリアン・バット”や、変わったラベルの”ビフィータ”なども並んでいます。

マ:「今、お仕事終わりですか?」

私:「ええ、ちょっと北九州から。」

マ:「あー、北九州ですか、私も昔住んでいたことがあるんですよ。」

初めて入ったBAR。

見慣れない客に、マスターは最初は少しずつ探りを入れ、徐々に打ち解けていく。
この流れがスムーズに行くとたまらなく心地よい。
打ち解けて居心地がよくなるのはもちろんだけれど、その過程をスムーズに進める技もありがたい。

二杯目の”ホワイト・レディー”を飲み干すころにはマスターが、

マ:「WBC、気になりません?」

私:「そう言えば今日また韓国戦ですよね?」

マ:「i-モードでチェックしてもいいですかね?」

私:「どうぞ(笑)、でもその前に”オールド・ファッションド”をメーカーズ・マークでお願いします。」

手作りの丸氷を使って作られた”オールド・ファッションド”
このカクテルはお店によっていろいろなバージョンがあるのだけれど、BAR UNCHAINEDのものはオーソドックスで、かつバランスも良い。

マスターに聞いたら、店の前の通りは名も無い通りだということ。
それではその名も無い通りをもう少し探検してみようか・・・

更につづく。

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2009.03.10

下関に行ってきたんですよ。

な~んか最近忙しい。
あまりにも忙しすぎていろいろなことがうまく行っていない感じがする。
そんなときはちょっとリセットしたいよなぁ~。
と思っていたら、夕方下関に行く仕事ができました。

久しぶりに知らない街で飲んでみるか。

Photo下関での仕事が終わったのはちょうど6時ごろ、飲み屋街には、そろそろ看板に灯がともっています。
とりあえず駅前の一角をぐるりと回ると、「下関の魚と季節料理・諸国の地酒」と書かれた看板を発見。
新しそうだけれど、わかりやすい看板に引かれて入ってみたのは「狐拍子」というお店。
階段を上って二階の引き戸を開けると、ご主人が弦楽器を弾いているところでした。

私:「もういいですか?一人ですけど。」

ご主人:「あ、どうぞどうぞ、どこでもお座りください。」

まずは”ビール”をお願いします。
料理はご主人におまかせ方式で、その日のおススメが出てくる仕組みです。

さてさて、どんなお酒があるのかな・・・

東北泉、綿屋、神亀、竹鶴、鷹勇、んーなるほど、壁のメニューには納得の日本酒が並んでいます。

私:「お酒、だいたい全部置いてあるんですか?」

ご主人:「そうですね、いくつか切れているものもありますが、ほぼ有ります。」

私:「それじゃ・・・”義侠”をお願いします。」

シックリと落ち着いた味に爽やかな喉越しの”義侠”を、お刺身の盛り合わせと共にいただきます。

静かな店内はカウンターが8席程度と、こ上がりがひとつ。

いい感じだ・・・

飛び込み一軒目から良い店に当たり、上機嫌でお願いした二杯目は”鷹勇

”白魚とソラマメの天ぷら”をつまみつつ、マッタリとした時間。

ソフトな風貌だけれど、話しすぎないご主人もいい。

おっと、良いお店だけれどここに居座ってはいけない。
下関の夜の街を、もっと探検しなくては・・・

というわけで「狐拍子」を後にし、もう少しディープな感じの飲み屋街の方角へと歩いてみるのでした。

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2008.06.06

”おこぜ”を食べてみた。

Photo転勤後は唯一の宿泊可能エリアである徳山。
この夜は後輩のM君といっしょに新しいお店を物色していたところ、”おこぜ”の文字を発見。
そう言えば北九州市でもあちらこちらで”おこぜ”の文字を見ることがあり、ちょっと気になっていたのです。
お店の雰囲気も良さそうだったので早速入店。

爽やかな風の吹くこの季節。
居酒屋の引き戸は開け放たれています。
長めの暖簾を分けてお店へと入ります。

「こんばんは~。」

「あ、いらっしゃいませ。」と、奥から大将。

私:「二人です。いいですか?」と、小上がりを指し示します。

大将:「どうぞ、どこでも。」

奥の座敷に陣取ると、まずは一杯目です。

M君は酒はまったく飲まないので”ウーロン茶”だけれど、私はお構いなしに”ビール”

時間がかかりそうな”おこぜのお造り”と、他にいくつかツマミをお願いします。
お酒のメニューに山口県らしい”獺祭”や”東洋美人”を発見。
貴重な徳山の夜、後輩に説教するでもなく、何か教えるでもなく、純粋に旨い肴とお酒を楽しむことにします。
最初に出てきた”筍の天ぷら”を食べ終わるころ、”おこぜのお造り”が登場しました。
ビールを飲み干し、合わせるお酒は”獺祭
コリコリとした白身の”おこぜ”に、さわやかな”獺祭”が良く合います。

「なぁM君、君は飲まないけれど、営業だから酒の場に同席することもあるだろ。そんなときの為に知識だけでも持っておいた方が良いぞ。」

などと結局、「刺身には日本酒」とか、「水割りは”美味そうに見える”ように作る」などと教えつつ。
最後は”東洋美人”でまとめて、いつもの一人飲みとはまた違った飲み方をした徳山の夜なのでした。

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