2020.08.02

阿佐ヶ谷:中華料理 三番で昼酒

Photo_20200719143401 長い梅雨も明けて夏の日差しが一気に強くなってきた日曜日。

この日向かったのは「中華料理 三番」いわゆる街中華のお店です。
このお店は阿佐ヶ谷の飲み屋街の一番端っこの、住宅街との境に位置しています。
決して派手ではない店がまえではありますが、それが逆に地域になじんで愛されていることの証明でもあります。

ガラリ・・・と引き戸を開けて、小さなテーブル席へと着席します。

中華のお店って、時々なぜか全体のスペースに合わない特大のテーブルと、それとは別に買ってきたチグハグなサイズの椅子がセットになっていて腰が落ち着かなかったり、あるいはテーブルやカウンターの上にやたらと物が置いてあったりすることがありますが、このお店は違います。
スッキリとした店内には小さなテーブル席がいくつか整然と並んでします。
壁にはおびただしい種類のメニューが貼ってありますが、これも全て同じ赤い紙に同じ高さになるように書かれています。
よく見ると鉛筆で下書きをしてから筆で描いたようで、こんなところにも仕事の丁寧さが見て取れて好感を持てます。


私:”瓶ビール”と”餃子”、あと”冷やし中華”をお願いします。

このお店の餃子は注文を受けた後に皮から作るので、ある程度時間がかかります。
そこでビールをやりながら文庫本(鬼平犯科帳)を読んで待つことにします。

グビ、グビ、プハァ~!
夏の日差しの中を歩いた分だけビールもウマイ。

しばらくして入ってきた二人連れは近所のご夫婦だと思いますが、やはりまずはビールを注文。
阿佐ヶ谷へ来て思ったのですが、昼酒に関してなかなか寛容なのです。
北九州でも昼酒をしている人(私とか)はいますが、周囲からやや批判的な視線を感じることもありました。
そんなときは、「遠山の金さんだって昼から酒を飲んでいるじゃあないか!特に杉良太郎バージョンは・・・」と心の中でお上の威光をかざしたりしたものでした。
それに比べて阿佐ヶ谷では、中年夫婦が余裕で一杯やっているあたり、酒好きにはたまらない、いい土地柄なのです。

そして到着した餃子。

モッチリした皮の中は、野菜中心の具がたっぷり。

こういう街中華は、なんと言っても安心感があります。

値段が高いということはないし、食べ方の分からない変わった料理もない。
味も誰にでもわかる味付けで確実にオイシイ。
広くないからお店の人の目も行き届いている。

和食のお店だと、料理は満足でも日本酒がイマイチでがっかりするパターンがありますが、私は中華の場合は最初からビール一辺倒に決めているのでその心配も無い。

その後に入ってきた三人組は会社員風(たいへんですね、日曜日なのに)
話しぶりからこのお店にはたびたび来ているようですが、そのうちの一人が餃子とチャーハンのどちらにするか散々迷ったあげく、最後になぜかワンタン麺を注文。(こういうヒト、いますよね)
静かな店内で他のお客さんを観察するのは実にオモシロイものです。

こちらはビールの残りを確認しつつ、冷やし中華に取り掛かりました。
冷やし中華も最近ありがちな”変わり冷やし中華”のようなものではなく、昭和の味を守り続けている感じがうれしい。

フゥ~。いい感じに満腹だ。

いくら昼酒に寛容とはいえ、飲み過ぎるのは御法度。

ブラブラ歩いて、特に意味もなく近くの公園の様子でもチェックして、家に帰ることにしたのでした。

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2020.07.21

阿佐ヶ谷:柿ざわ にて蕎麦屋酒

東京へ転勤したら思う存分食べたいと思っていたものが三つあります。

醤油ラーメン、マグロ、そして蕎麦です。

九州においてラーメンと言えばトンコツ。他の種類もあるにはありますが、圧倒的にトンコツラーメンが多く、逆に醤油ラーメンはかなりの少数派なのです。

マグロについても同様で、西日本はタイやヒラマサといった白身の魚が多く、なかでも海に囲まれた九州は地元産の魚介類がたいへん美味しいため、マグロのように遠くの海から冷凍して持ってきたモノは敬遠されるのです。
たまに近海で捕れたマグロが出ることもありますが、それはそれでお値段が・・・。
ということでマグロを思いっきり食べることが難しいのです。

蕎麦にいたっては更に難しくなっています。
ラーメンとうどんの小麦粉勢に押されてそもそもお店の数が少ないし、”麺類”というくくりで小麦粉勢のソウルフード的な低価格が基準となってしまいます。
よって蕎麦に関しても「何の変哲も無いお蕎麦屋さん」的なお店ばかりになってしまっているのです。

少々お高くても、季節のツマミと美味しい手打ち蕎麦。それにお酒。

というお店はなかなか無いのです。

しかし東京へ移ってからは状況が一変。
醤油ラーメンもマグロも、そして蕎麦もいつでも食すことが出来ます。
気がついたら月曜から金曜まで、昼か夜に必ず蕎麦を食べている週もあるほどです。

00 そんなある日、小雨の降るなか向かったのは阿佐ヶ谷にある蕎麦やさん「柿ざわ」です。

私:こんばんは。
と入店すると、奥から女性の店員さんが現れます。

私:ひとりです。
店員さんに促され、吸い込まれるように奥のカウンター席へと向かいます。
お店の造りとしては奥に長い構造ですが、店内の空気はスッキリとしており、カウンターやテーブルは当然ピカピカに磨き上げられています。
このような本各店ならではの”空気感”が、なんとも嬉しいものなのです。

01_20200718074301 まずは”ハートランド ビール”をお願いし、喉の疲れを癒します。

グビッ、グビッ・・・

シュワーッと炭酸が流れ、

フィ~!と、ビールため息をひとつ。
楽しい夜の始まりです。

02_20200718075101 ツマミは”小皿三種”からスタート。

6種類ある小皿料理から3種類。”パプリカとズッキーニの焼き浸し” ”水ナスの浅漬け” ”白瓜のカラスミ和え”を選択。

たまんないねぇ~。この風景。

酒宴の準備が整いました。

ハートランドを飲み干したらお次は日本酒です。

03_20200718075201日本酒は10種類くらい用意されており、片口で供されます。

まずは島根の”開春 純米超辛口”をオーダー。

おお~、なんかスゴイ酒器で出てきたゾ。

心躍らせながら開春を一口。

スッキリグイッと。
鳥取・島根・石川三県のお酒はまず間違いなく美味しいのです。

05_20200718075201

後からやってきた他のお客さんもお酒を頼んでいますが、皆静かに飲み、くつろぎ、あるいは語らっています。

小皿のツマミも少なくなってきたので、ここで”ハモの天麩羅”を注文。
まさしく季節のお料理を前に胃袋が動きます。

04_20200718075201

二杯目の日本酒は宮城の”伯楽星 純米吟醸”をチョイス。

このお酒も毎年ハイレベルを維持しているすばらしいお酒です。
艶やかな吟醸香と、涼しげな色の片口がジメジメとした長梅雨の雰囲気を追い払ってくれます。


06_20200718075201 注文のたびに女性店員さんがテキパキと対応していただけるので、リズム良く酒と肴をいただくことができます。
最後は当然お蕎麦で、”鴨せいろ”。
やや細切りでエッジのしっかりした蕎麦をたぐって〆たのでした。

ハートランドがある、日本酒は片口で供され、蕎麦がウマイ、接客も良い。

文句ナシのお店なのでした。

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2020.07.10

人情の街 阿佐ヶ谷

03_20200710090201 阿佐ヶ谷の夜の街。引き続き新規開拓を進めており、暖簾をくぐったお店はそろそろ二十軒になろうとしています。
阿佐ヶ谷の飲み屋街は比較的小さくて個性のある店がぎっしりと密集しており、行きたいと思うお店がまだまだいくらでもあるのです。

そんなある夜。

この日は朝から小雨が降っており、夜の新規開拓にはうってつけの天気です。そこでもちろん、また小さそうなお店に足を踏み入れてみました。

私:こんばんは。
女将さん:いらっしゃい。どうぞどこでも。

古そうな建物の薄暗い店内はカウンター6席と小さなテーブルが2つ。
飴色に染まった壁がこのお店の歴史を物語っているようです。
メニューに目を走らせると大物はなく、ちょっとしたツマミで一杯やるスタイルのお店のようです。
店内は女将さん一人。

私:えっと、飲み物は・・・。
女将さん:メニューの裏側に・・・。
私:なるほど、あっ!

メニューを裏返すとビンビール:ハートランドと目が合いました。
何度も言いますが、「ハートランドを置いているお店に、ダメな店は一軒も無い。」のです。
当然ハートランドをお願いし、ツマミも一品お願いします。

一杯目は女将さんが注いでくれました。

女将さんと世間話などをしつつ、日本酒へ移行。日本酒を二杯ほどとツマミをもう少しいただいて、そろそろ帰ろうとしたとき・・・



財布が無い。



ということに気づきました。
記憶をたどると会社のデスクの引き出しの中に置き忘れたようです。

んー、どうしよう。初めて入ったお店だし、マズイよなぁ~。
下手をしたら食い逃げで突き出される可能性もあるし・・・。

考えあぐねてついに女将さんに事実をお話しすることにしました。

私:あのー、実はコレコレシカジカで、お金がありません。

女将さん:アラアラ。まぁいいわよ、また今度で。

私:エッ?自宅が近いから一度帰ってですね・・・。


女将さん:いいわよ、雨も降っているし。


私:エエッ!だって今日初めて来たのに。ところでおいくらなんですか?


女将さん:う~んと、¥3,250ね。」


私:そうだ、もしものときの為に、名刺入れに千円札が一枚入っているんです。ひとます今夜はこれだけでも・・・。


女将さん:いいってば、明日の朝”もしものこと”があったら困るでしょ。



なんという出来事!

 


この夜は人情という隠し味に心を落ち着けられて家路に着いたのでした。

翌日は当然このお店にうかがい、「まずは昨日の分です。お騒がせしました。」と¥3,250をお支払いし、何事も無かったようにカウンター席に座り、また杯を傾けるのでした。

※本当の食い逃げ事件が起きるとお店に迷惑がかかるので、店名や具体的なメニューは伏せました。
※写真もお店の場所とは別の通りです。

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2020.06.29

阿佐ヶ谷新規開拓:さけ処 彦次郎

01_20200629214601 コロナによる緊急事態宣言も解除され、新天地である阿佐ヶ谷での新規開拓もボチボチ開始しています。
阿佐ヶ谷の街は「東西南北どちらに行っても良い飲み屋がある」と言われるほどの、天国のような街なのです。

一口に「良い店」といっても、何を基準に探すのか、そして入店を決めるのか。
会社の同僚や後輩から「良い店を紹介して下さい」などと言われると、とりあえず私の「地域別飲み屋名刺ファイル」を取り出してはみるものの、正直少し困ってしまうものなのです。
その人にとって、あるいはその場面によって、「良い店とは何なのか」が違ってくるからです。聞いてきた人の考えが明確になっていないと、お店の選びようが無いのです。
単に私の好みで紹介したところで、相手にとってはイマイチであったりする可能性はじゅうぶんにあるのです。
極端なことを言えば、「高級フランス料理が食べたい!」と思っている人には、私は紹介できるお店を一軒も知らないのです。

で、私自身はどんなお店が好きかと言いますと、居酒屋の場合以下の通りなのです。

・店はあまり広くなく、個人経営。
・料理は和食中心で季節の美味しいものがちょこちょこっと。もしもの時のために丼ものとか麺類もあるとありがたい。
・お酒は日本酒で、店主の好みの銘柄が数種類以上置いてある。
・ある程度長い年月営業している。
・金額は、日本酒三合くらいを含めて¥5,000~6,000程度。

他にもいろいろありますが、お店に入る前にある程度わかることとしてはこんな感じです。

店が広くないほうが静かで落ち着けるし、個人経営の方が店主の個性が出て味わいがある。
稀に店主が恐怖政治を敷いていたり、酒のウンチクをプロパガンダする店もあるがそれはそれ。
私自身の歳も五十に近づいたので、たくさん食べるよりは、少しで良いから美味しいものをいただきたい。
日本酒は好きだし、店主とのコミュニケーションのきっかけとしやすい。
きのう今日開店したお店よりは、地域で安定した経営を続けているお店の方が信用できる。
というわけです。

Photo_20200629102301thumb1 そして六月のある夜、阿佐ヶ谷の飲み屋街をブラブラと歩いていて見つけたお店が、「さけ処 彦次郎」です。

私:こんばんは(とドアを開け入る)
店主:いらっしゃい(と小さな声で)

まずは”生ビール”をお願いして店内を見回します。
先週に続いて二回目の訪問となったこの夜は先客も無く、カウンター席のみの店内は静かです。
しかし新参者としては入り口に近い席へと腰を下ろします。

ホワイトボードには”カツオ刺し・タタキ””アジフライ””トマトのチーズ焼き””うるか”等々のツマミ類が並び、”素麺”や”卵入りうどん”もあります。

私:えっと、”トマトのチーズ焼き”と”マグロ切り落とし”をお願いします。
小柄で白髪の店主:(中ジョッキを差し出しながら)雨、まだ降ってます?
私:ほとんど、やみましたよ。

といった感じでポツポツとした会話が始まります。

店主はおそらく、「この人、先週初めて来た客だな。今週も来たということは、ウチの店を気に入ったのかな?」などと考えをめぐらしているのかもしれません。
トマトのチーズ焼き”をつまみながらビールをグビグビ。
蒸し暑い宵の口には生ビールが活躍してくれます。
早速二杯目のビールと、”アジフライ”を注文。
アジフライに添えられた野菜にも、隠し味が秘められたようなドレッシングがかかっていて、一皿キレイにいただけます。

私:次は日本酒を・・・  と、店の奥にある日本酒メニューを見るために二三歩奥へ。
日本酒の銘柄は十種類くらい揃っていて、酔鯨、北雪、銀盤等々。
辛口、甘口、スッキリ、香りが良いなど、各種注文に答えるべく選んでいるようです。
そのなかから”大山”をオーダー。
片口で供された”大山”は私の好きな山形のお酒で、渋みを含んだ味わいが、マグロの脂をサラサラと洗い清めてくれます。

小さな店内でゆったりと流れる時間。
マグロを食べていると、関東に戻ってきたことを実感するなぁ~。

最後に頼んだお酒は”雪の茅舎

店主:日本酒。お好きなんですね。(じゃないと大山はダイセンと読む人が多いし、普通、ユキノボウシャは読めませんからね・・と思っていたら私の狙い通りだが・・・)
私:ええ、何でも飲みますけど、一番は日本酒かな。
店主:ご自宅にもお酒が?
私:冷蔵庫のサイズは、一升瓶に合わせて選びました。
店主:それはそれは(笑)

夜の深まりとともに、店主との距離感も少し近づいた。

そんな楽しい夜なのでした。

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2020.04.11

ベランダカウンター復活!

新型コロナの影響に伴う非常事態宣言以降、飲み屋街でも営業自粛のお店が大部分となっています。
私自身も外で飲むことは自粛しており、かなりの欲求不満が溜まっています。

 

こんなときは家飲みを充実させるに限ります。

 

もともと我が家には日本酒→冷蔵庫は一升瓶が入ることを基準に選定。ワイン→ワインクーラー所有。ウィスキーなど洋酒類→自作酒棚。によりお酒は十分に揃っているのです。これらを美味しくいただくためにはツマミも重要ですが、環境も重要。

 

ということでベランダカウンターを復活させることにしました。

 

小倉時代に始めたベランダカウンター。
マンションの9階からの景色を眺めつつ、休日にゆっくりとお酒を楽しんでいたのです。
今回の住居は南東の角部屋で、南側から東側へ長いベランダが続いているのです。もちろん日当たりは最高で、洗濯物を干しているときでもベランダに空きスペースが十分にあります。
04_20200410131801 カウンターと椅子は以前使っていたものをちゃんと持って来ていたので、天板と椅子の座面の木材にチークオイルを塗り込んで美観と耐久性をアップ。コンクリートの床面にウッドパネルを敷き詰めれば完成です。

 

 

02_20200410123701 この日の食卓はパスタにタコと野菜のマリネ、カマンベールチーズに味付けしたもの。そして良く冷やした白ワインで酒宴を張ることにしました。。

 

いやー気持ちがいい!

ワイングラスを透過した春の日差しがキラキラと輝いている。

 

ところで今度のベランダからの眺望はと言いますと・・・。

 

03_20200410123901 線路です。
鉄道です。
中央線・総武線の高架が良く見えるのです。

時々列車が通過すると、その昔立川や八王子地区を担当していたころを思い出し、特に特急列車が通ると、新潟出張時に直江津駅から長野→松本→八王子→相模線と乗り継いで自宅へ帰ったときのことなどを思い出します。
直江津・長野間は乗客も少なく、冬は全ての景色が雪に埋もれて押し黙ったように静かな時間が続きます。
そんな時、その週の仕事を反省したり思い悩んだりしていたこと、長野駅近くの地下の居酒屋で食べた美味しいキノコ鍋のことなどが思い出されます。

 

しかし・・・。

 

 

 

電車の数多いなぁ。

 

 

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2020.02.01

久々の秋葉原、昔懐かしの居酒屋へ・・・。

昨年の11月。久々の東京出張がありました。
東京の営業拠点に顔を出そうかとも思いましたが、やはりと言うかせっかくだからと言うか、自分の好きな店で自分のペースで飲み食いしたくなったのです。

 

そんなわけでこの夜はソロ活動。

 

向かったのは秋葉原の名店「季節料理 赤津加」です。

01_20200201113401 電気街でも特に賑々しいエリアの短い路地に、気をつけないと見落としてしまうような小さな引き戸の店がまえ。
東京勤務時代はほぼ毎週訪れていたこの居酒屋も、思えば十年以上顔を出していなかったことになります。
変化の早い東京の町。少し前にも、昔通っていた渋いBARがいつのまにかダーツバーに変わっていて落胆したことがありました。

 

「もしかして全然変わってしまっていたら・・・」

 

という不安が横切ります。

 

少し緊張しながら引き戸を開けます。

 

ガラリ・・・

 

開店間もない時刻と言うこともあり先客は一人。年季の入ったコの字型カウンターの隅で徳利を傾けています。
一歩二歩と踏み込むと、

 

「あら、お久しぶりよねぇ」という女性の声。

 

十数年前にカウンターの向こうでテキパキと働いていたYさんだ。

 

私:「十年以上ぶりです。」

 

促されて角の席に座ると、まずは”生ビール
一息ついて店内を見回せば、ピカピカに磨き上げられた飴色のカウンターも、モミジの巨木を使った柱も昔のままだ。
そして客層も変わっていない。50代くらいに見えるオッサン中心で、1人で飲んでいるか、多くても2人組の人が多い。

 

料理は”マグロのブツ”と”川海老唐揚げ”をオーダー。
関東に来たならマグロを注文してその良し悪しを見れば、そのお店の魚介類のレベルが分かるものなのです。
「赤津加」の”マグロのブツ”は文字通りブツ切りにした赤身。エッジがシャープで新鮮さを感じさせます。金さえ出せば誰でも手に入るトロなんか使わずとも十分な満足度を提供してくれるのがイイ。

”川海老唐揚げ”は美しいオレンジ色の川海老がパリッと揚げられて塩をふられた料理(素揚げに近い)ですが、私はこれにも多分ひと手間かかっているものと推測しています。なぜなら川海老のウデが無いからです。
時々一本か二本混ざっているウデを見ると海老はテナガエビだと思うのですが、ウデの部分は食べづらいか何かの理由で取り除いているのだと思う。

03_20200201112401 そんなことに考えをめぐらせながら、お酒は”熱燗”をお願いしました。
このお店の素敵なところは、ちゃんとした酒燗器を使ってYさんが一本づつお燗をつけてくれるところなのです。
普段は日本酒の銘柄にこだわる私も、赤津加においては”菊正宗の熱燗”だけで十分なのです(他の銘柄もいくつかあります)

続いてツマミはこの日のオススメから”里芋柚子塩唐揚”をチョイス。
気づけば六時を回り店内も忙しくなってきたようです。
思えば十数年前に通っていたころ、私は一度も名のってもいないし、誰かを連れて行ったこともない。宴会を開いたことも無い。Yさんと世間話をしたことも無い。
それはこのお店のピークが六時過ぎくらいで、いつも一番忙しい時間帯にわずかに空いたカウンター席に滑り込んでいたからなのです。
そして九州へ転勤することも特に告げずに姿を消したのです。

 

にもかかわらず私のことを覚えていてくれた。

 

その喜びに浸りつつ、最後に”熱燗”もう一本と”湯豆腐”をお願いし、この老舗酒場の雰囲気に抱きすくめられたのでした。

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2019.03.16

大阪出張 不毛の地で最高の一軒を見つけた夜。

時々ある大阪への出張。
本社での会議がメインであり、当然飲み会も予定されるワケです。
最果ての九州に勤務する身としては、本社での飲み会は貴重な情報交換の場であり大切にしたいもの。しかし年に何度もとなると、社内にネットワークを張り巡らすのも疲れてきたし、大勢での飲み会にも飽きてきた。

それに本社の近辺にはどうも良い居酒屋が無い。会社の連中はすぐ「王将」に行きたがるので自分で他の店を探してみたけれど、なにしろチェーン店ばかりである。駅の東側は過去にかなり歩いてみたけれど不毛地帯。犬死にでした。


今夜は独りで呑みたい。

そこでこの夜は西側を探索してみることにしました。

とりあえず何の当てもなくブラブラと、駅から遠ざかる方向へと歩きます。
しばらく歩くと下層が飲食店、上層がオフィスになっているやや古い感じのビルに、気になる看板を発見しました。

1_2おばんざいとお酒 うきわ」とあります。”おばんざい”は手作り料理がメインであることを、”お酒”と明確に書いてあるからにはある程度日本酒が揃っていることを連想させます。

看板の感じはフンワカとした感じで、この手のジャンルのお店にありがちな”酒 肴 順二”みたいなイカメシイ感じはありません。ビルも新しすぎず、かといって雑居ビルのような猥雑感もありません。階段を上り三階の店舗の様子をうかがってみることにしました。 

Photo_2 入り口の雰囲気は明るく、女性店主であることが予想されます。
地上階と違って新規飛込みの客は少ないであろうことを意識して、遠慮がちに扉を開きます。

私:「エッと、一人なんですけど、いいですか?」

女性店員さん:「どうぞ、どちらでも。」と明るい応対。

店内はカウンターが五席とテーブル席が二つ。通りに面した側の大きなガラス張りの前にもミニカウンター席があるようです。

カウンターの一番隅に座ると、”ハートランド・生”の文字が!

「この世界に絶対確実に100%のことなど存在しない」と哲学者は言いますが、私の経験上「キリンのハートランドを置いているお店は100%良い店だ」と言い切れるのです。しかもこのお店はを置いている!

迷うことなく”ハートランド・生”をオーダー。

ほどなく運ばれてきたハートランドは専用のジョッキで登場!
やがて訪れる幸せを予感させます。

グビ、グビ、グビ、プハァ~。


冷たいビールなのに体が温まります。

「お料理はおばんざいを三品または五品選んでいただいて、足りなければ他に追加も出来るんですよ。」と店員さん。

私:「ん~、では三品で、」

”イカと菜の花のペペロンチーノ”、”油揚げの鰯とチーズのはさみ焼き”他にミズナの和え物を選択してしばし店内を観察。
先客は会社帰りの二人組のみです。お店は女性二人で切り盛りしているようで清潔感のある内装。メニューを見ると季節の食材を使ったおばんざいの他に、蕎麦もあるようです。

Photo そうこうしているうちに”おばんざいの三種盛り”が登場。どれも手が込んでいて美味しそうです。味の方もメリハリが効いた酒好きにはたまらない美味しさ。

さてと、日本酒は・・・とメニューを見ると。”大七”、”大那”、”義侠”、”開運”、”雨後の月”とそうそうたる品揃え。
先ずははやる心を落ち着かせるために飲みなれた”開運 純米無濾過生酒”をお願いしました。
他のお客さんもチラホラとやってきた店内。おばんざい中心のメニューなので待たせることなくスムーズに回っています。

お次は”福祝 無濾過瓶燗一火”という初めて見た千葉のお酒をオーダー。
常連客からであろう電話に軽やかに対応する店主と思しき女性。
決して大きな顔をせずに飲んでいる客たち。
求めていた、活気がありつつも静かな酒場がここにはあります。

雰囲気、料理、ビール、日本酒。ここまで100点満点の展開に満足しつつ最後のオーダーをすることにしました。

私:「あの、お蕎麦を。それといいお酒揃ってますね。このラインナップだとお燗もOKですか?」

店員さん「もちろんです(笑顔)」

私「ではゼヒとも”大七”をぬる燗くらいで」

Photo_3 ほどなくして供された”大七 生酛純米”はなんとチロリで登場。

お蕎麦の方もよく締まった感じの十分満足のいく味わい。

あ~、地元だったら明日も来るのに。

独り呑みに最高の一軒を発見し、これからの大阪出張が楽しみになる一夜なのでした。

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2018.04.28

bar nidoでラム酒の世界に浸る。

雨が音もなく降る夜。
そんな夜は小倉の飲食店街にも人影はまばらです。 
しかしこのような人の少ない晩こそ、静かなBARでゆっくりと過ごすのには最適なのです。

Nido古めかしい飲食店ビルの2階の一番奥。
夜八時になるとほんのりとした明かりが看板に灯ります。
bar nidoです。

開店時間を狙ったかのように、ギッ・・と扉を開けると、

「いらっしゃいませ」とマスターの歯切れの良い声。

カウンター席に腰を落ち着け、まずは”ジン・トニック”をお願いして一息つくことにします。
木材の柔らかさやぬくもりを感じさせる店内は、カウンター7席と他に小さなテーブル席。目の前で進められるマスターの丁寧な仕事ぶりにゴクリと喉を鳴らしながら完成を待ちます。
ジンはボルスを使われており、かすかな苦味の後に爽やかさが追いかけてきます。そのジン・トニックを味わうと、一日の疲れが洗い流されて行きます。

このお店の特徴はラム酒を80種類以上、ジンも数十種類置いていることです。

ラムやテキーラをたくさん置いているお店というのはなかなかなくて、稀にあっても店主が”レゲェスタイルの兄ちゃん風”だったり、あるいは結構な高級店だったりとどうも波長の合わないケースが多いのです。
しかしこのお店bar nidoは、しっかりとしたBARのスタイルで、マスターもまじめそのもの。
ラム酒の奥深い味わいに安心して浸れるというわけです。

マスターはお酒を愛するあまり50歳を過ぎてからサラリーマンを辞め、専門のスクールで学びこのお店を独立開業するまでに至ったという、少し変わった経歴の持ち主です。

カウンターの片隅には地球儀が置いてあり、ラム酒の産地についてマスターが説明をしてくれます。
ラム酒というとすぐにキューバが思い出されますが、実は中南米の各国で作られていて、思いのほか生産国の数が多いのに驚きます。
Nido_2地球儀にはコロンブスはもちろん、マゼランやバスコダ・ガマの肖像とその航路も記されていて、大航海時代のロマンを感じさせてくれます。
中米のほとんどの国がかつてはスペイン領であったこと、極めて小さな島が一つの国だったりすることなど、お酒を飲みながら地理や歴史の学習も出来るのは楽しく、また得をした気分でもあります。

お酒や食べ物を見るとすぐに値段の話になる人がいますが、どんな国で、どんな人が作っているのか、どんな歴史があるのか・・・。
そんなことが案外しっかりとした隠し味になったりするものなのではないでしょうか。

私:「火曜日は飲みすぎて翌朝もグロッキー状態でしたよ。」
マスター:「ハハハ、ところでグロッキーの語源は、イギリス海軍のグロッグ提督という人物からきているんですよ。」
私:「ホゥ、それは初めて聞きました。」
マスター:「昔の航海では水の代わりに保存のきくお酒を大量に・・・」

などと話しつつ、マスターおすすめのラム酒を少しずつ流し込みます。

週末にはお手伝いの美魔女系店員さんも登場し落ち着いた店内に華を添えてくれます。

屋号の”nido”はイタリア語で巣箱という意味だそうで、まさしく大人の巣箱になっている。
そんな素敵なお店なのです。

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2018.01.10

山口県宇部市。やはり市役所の近くに良い店あり。

夜の風もだいぶ冷たくなった今日この頃。先日は山口県の宇部市に宿泊しました。
北九州市から車で一時間ほどの距離にある宇部市は、毎月のように訪れているものの宿泊するのは年に一度か二度です。

宇部市のシンボルといえば世界的な化学メーカーである宇部興産の広大な工場。しかしその最寄駅であるJR宇部新川駅周辺の街は、あまりにも寂れているのです。
大きな工場の企業城下町にありがちなことではありますが、生産の海外移転やオートメーション化で、高度成長時代に比べると工場で働く人の数が何分の一にも減ってしまったことが主な原因でしょう。場所によっては昼間でも足を踏み入れることをためらってしまうような一角もあるのです。

そんな宇部の夜の街は、過去に何度かふらふらとさまよってみたものの、これというお店は見つからずじまい。
この夜はすでに時間も遅いし、車の運転で疲れたし、ラーメンとビールで済ませることに・・・。
のはずが、生ビールを2杯飲みほすころになると、

「せっかくの宿泊なのに、これで終わっていいのか?本当にそれでいいのか?」
という内なる声が聞こえてきます。
そんなわけでラーメン屋を出ると、自然にこれまであまり歩いたことの無いエリアの方へと歩みを進めます。
私の経験上、県庁や市役所など人の多い役所や、大きな病院の近くには落ち着いた感じの良いお店が見つかることが多いのです。


かなり歩いた後、宇部市役所の前へと到達しました。


Ube01_3しかし・・・。

ありゃ~。

周囲にはお店があることはあるのですがスナックばかり。
しかもほとんどのお店は看板に灯が入っていない・・・。

やはり今夜もダメか・・・。

と思った直後、真っ暗な通りの一角にほかと少し違う店構えのお店を発見しました。
Ube02 白い壁にスリットが入っており、そのスリットの奥には数々のグラスが並んでいます。
入り口近くに「竹」と書かれた小さな看板。
正面の壁は最近塗装されたようでもあるし、建物の裏のほうを見るとそのまま住居に続いているように見える。

悩む。

ちゃんとしたバーのようでもあるし、美容院かなにかであった店舗を改装して営業している”オバチャン・スナック”かもしれない。
さっきから見ていても客の出入りが全く無いので、店内の様子はわかりません。
入り口付近は照明が無く、開店前なのかもしれません。

しかしここまで歩いてきてしまったのだから、探検せずにホテルへ引き返すのももったいない。ひとしきり考えた結果、覗いてみることにしました。

こういうときに注意しないといけないのは、文字通り覗くように首から先に入ることです。勢いをつけて足から入ってしまうと体全体が店内に入ってしまい、

「ありゃりゃ、失敗した。」

と思っても引き返すことが出来ません。
首から入って覗き込めば、「すいません、間違えました」とか言って引き返すことも可能なのです。

木製の扉をよく見ると引き戸になっているようです。緊張しながら引き戸を開けてみます。

ガラリ・・・。

ワーオ!

Img_3332488 店内は中心に白木の美しいカウンターが置かれた、しっかりとしたバーの雰囲気。
先客はなし。四十代後半から五十代前半とおぼしきマスターが迎えてくれました。

まずは”ジン・トニック”をお願いし、改めて店内を観察します。

お店は比較的新しい感じですが、カウンターの厚さと美しさがただものではないことを物語っています。
ライムの香りをグラスの淵に丁寧に付けて作られたジン・トニックをいただきながら、マスターにお話を伺います。

非常に美しいカウンターは、その色や木目から日本の木材のように見えます。
店内には昔どこかで嗅いだことのある木の香りが薄く漂っています。

私:「この美しいカウンターは日本の木材ですか?」
マ:「はい、イチョウです。」
私:「ほぉ~それはスゴイですね。イチョウと言えば高級なまな板の材料ですよね?」
マ:「おお、よくご存知ですね。」
私:「実家の隣が神社でして、昔その神社のイチョウの大木の枝を伐採したときに、切り落とした太い枝を大工さんがまな板に加工して、近所の家に配ったことがあるんですよ。」
マ:「なるほど。」
私:「この木の香りも思い出しました。」
マ:「一生分の借金と引き換えに購入しました(笑)」

二杯目は”ホワイト・レディ”をオーダー。
シェイカーをセットするときに、それまでにこやかだったマスターの表情がキリリと締まったのが頼もしい。

聞けばこのお店は三年ほど前に開店。その前は小野田で長くお店をされていたそうです。
移転したのは宇部以上に寂れてしまった小野田ではさすがに商売が難しくなったという事情もあったようです。

マ:「カップルのお客様が一組しか入っていない夜は、(騒がしい客が入ってこないように)外の看板の灯を落としたりとかしていましたからね。」

というマスター。

素晴らしいお店というのはいつまでも記憶に残るもので、そんなお店に出会うと過去に行ったお店のことも思い出すものです。
この夜発見した「BAR 竹」で、いくつもの懐かしいお店を思い出しつつ、ゆったりとした時間を楽しんだのでした。

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2017.10.15

都城市の夜に、いぶし銀の星が二つ。  後編

都城市での二軒目は、小倉のbar raisinで教えていただいたお店へと向かいます。
調べてみたら電車で一駅、西都城駅の方にあるようですが、電車の本数は思ったより多くて一安心です。
その西都城駅へと移動し、駅前に設置された地図を見てみると、目的地が先ほどのお店で聞いた”一番の飲み屋街”である牟田町であることが判明。

ところが・・・・

目的地までの道のりは街灯もない真っ暗な道が続きます。
少し歩いたところでやっといくつか明かりが見えてきました。
とはいえあまり華やかとは言えない飲み屋街。その一角の、おそらくこの辺りではランドマーク的になっているものと思われる大き目の飲食店ビルに、目指したお店はありました。

Photo SHOT BAR トロアジェームオム

扉を開けると先客は無し。
まっすぐなカウンターとテーブル席が2つ。

マ:いらっしゃいませ
私:こんばんは。えっと・・・。
マ:どうぞ、真ん中へ。

まずは”ジン・トニック”をお願いしたところ実にシャープな味わいで喉越しがバツグン。

その味に、
「このお店、いい店だ。」

と確信し、改めて店内を見まわします。
バックバーには数百本のボトルが鎮座しています。
意外にも古いお店ではない様子で、マスターも重鎮クラスかと思いきや、お歳は60手前と思われる。

マ:ご出張か何かで?
私:ハイ、小倉から。向こうでraisinのマスターにこのお店を教えていただいたものですから
マ:あー、林さんね。そうですかそうですか。
私:”トロアジェームオム”とはどのような意味なんですか?
マ:「三番目の男」という意味なんですよ。
  一番がお客さん、二番目はバーの雰囲気、三番目にバーテンダー。
  私はそれで良いと思っているんですよ。


そんな会話をしつつ、二杯目は”ホワイトレディー”を注文。
独特な長く丁寧なシェイクの後に供されたカクテルは、やさしさを感じさせる味わい。

マスターによると、最初は現在と同じような普通のサイズのお店をやっていたのだが、その後しばらくして世の中の景気とともに経営を拡大。
かなり広いお店で人も何人か使って酒場を営んでいた時期もあったとか。
しかし結局は、自分の理想と違った方向へ向かっていることに気づき、数年前に原点に戻るようにして現在のお店を開いたそうである。

いぶし銀のマスターのお話を聞きつつ最後は”マティーニ”でキュッと締めたのでした。

めったに訪れることのない都城市。
そこで出会ったいぶし銀の酒場の主二人。

「何か理由を作って、また来たい。」

そう思わせる静かな街なのでした。

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