2022.04.21

やはり個人店だよな。

ある日の昼食。3人で行った出張先で入った店は、いわゆる古民家リノベーション風。
二階の畳の部屋での食事が終わり車に乗り込むと早速反省会。

私:建物はホンモノの古民家というか、古い商店に手を入れた感じだったな。

M:寒かったですね。(料理が)出てくるのけっこう遅かったし。

H:まだ開業して間がないんじゃないでしょうか。お店の人も若かったし。

私:だからオペレーションがうまくいっていないのかな。雰囲気先行型ってヤツか・・・。

M:メニューの素材に豆が多かったですよね。


私:俺が頼んだのは納豆定食。

H:どうでした?

私:ちょっとボリューム不足かな。ご飯に納豆と、みそ汁に漬物。家でも食える。

M:僕は煮魚定食で味は普通でした。そういえばメシが玄米みたいでしたよね。


私:ヘルシーとか無農薬とか、思想先行型かもしれんな。

H:Mは料理を待っている間、置いてある本を読んでいたよね。

M:ええ、実は最近、飲食店に置いてある本は、料理に関するガチな内容の本が多いと気づいたんですよ。


Hと私:フゥ~ン。

私:ところであの若い二人(店の人)は夫婦かな?

M:いやぁ~どうでしょう。一階のトイレに行ったときに見たんですけど、男の人の方が料理担当で、でも店の主人って感じではなかったですよ。


私:やはり女性の方が店主か。

H:近所のショップの名刺とかも置いてあったし、地元の人ですかね?

M:いや、さっき言ってた本の裏表紙に、神田の古本屋街の値札が貼ってありましたから、もしかしたら二人のどちらかは地元の人ではない可能性が・・・


私:深堀りするね。

M:ええまぁ。


私:つまりあの店は、親戚の叔母さんが何か小さな店を経営していたんだが、高齢になって数年前にやめてしまい建物も取り壊されようとしていた。しかし古い建物を壊すのはもったいないからと、姪っ子が始めた健康志向の店。男の人は多分・・・う~ん、店主の友達の弟で、実家が旅館か料理屋なので多少料理の心得がある人。ということだな。

HとM:深堀りしすぎですよ!!


何の特徴もないチェーン店よりも、個人店の方が楽しめるという典型的な出来事なのでした。

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2020.02.01

久々の秋葉原、昔懐かしの居酒屋へ・・・。

昨年の11月。久々の東京出張がありました。
東京の営業拠点に顔を出そうかとも思いましたが、やはりと言うかせっかくだからと言うか、自分の好きな店で自分のペースで飲み食いしたくなったのです。

 

そんなわけでこの夜はソロ活動。

 

向かったのは秋葉原の名店「季節料理 赤津加」です。

01_20200201113401 電気街でも特に賑々しいエリアの短い路地に、気をつけないと見落としてしまうような小さな引き戸の店がまえ。
東京勤務時代はほぼ毎週訪れていたこの居酒屋も、思えば十年以上顔を出していなかったことになります。
変化の早い東京の町。少し前にも、昔通っていた渋いBARがいつのまにかダーツバーに変わっていて落胆したことがありました。

 

「もしかして全然変わってしまっていたら・・・」

 

という不安が横切ります。

 

少し緊張しながら引き戸を開けます。

 

ガラリ・・・

 

開店間もない時刻と言うこともあり先客は一人。年季の入ったコの字型カウンターの隅で徳利を傾けています。
一歩二歩と踏み込むと、

 

「あら、お久しぶりよねぇ」という女性の声。

 

十数年前にカウンターの向こうでテキパキと働いていたYさんだ。

 

私:「十年以上ぶりです。」

 

促されて角の席に座ると、まずは”生ビール
一息ついて店内を見回せば、ピカピカに磨き上げられた飴色のカウンターも、モミジの巨木を使った柱も昔のままだ。
そして客層も変わっていない。50代くらいに見えるオッサン中心で、1人で飲んでいるか、多くても2人組の人が多い。

 

料理は”マグロのブツ”と”川海老唐揚げ”をオーダー。
関東に来たならマグロを注文してその良し悪しを見れば、そのお店の魚介類のレベルが分かるものなのです。
「赤津加」の”マグロのブツ”は文字通りブツ切りにした赤身。エッジがシャープで新鮮さを感じさせます。金さえ出せば誰でも手に入るトロなんか使わずとも十分な満足度を提供してくれるのがイイ。

”川海老唐揚げ”は美しいオレンジ色の川海老がパリッと揚げられて塩をふられた料理(素揚げに近い)ですが、私はこれにも多分ひと手間かかっているものと推測しています。なぜなら川海老のウデが無いからです。
時々一本か二本混ざっているウデを見ると海老はテナガエビだと思うのですが、ウデの部分は食べづらいか何かの理由で取り除いているのだと思う。

03_20200201112401 そんなことに考えをめぐらせながら、お酒は”熱燗”をお願いしました。
このお店の素敵なところは、ちゃんとした酒燗器を使ってYさんが一本づつお燗をつけてくれるところなのです。
普段は日本酒の銘柄にこだわる私も、赤津加においては”菊正宗の熱燗”だけで十分なのです(他の銘柄もいくつかあります)

続いてツマミはこの日のオススメから”里芋柚子塩唐揚”をチョイス。
気づけば六時を回り店内も忙しくなってきたようです。
思えば十数年前に通っていたころ、私は一度も名のってもいないし、誰かを連れて行ったこともない。宴会を開いたことも無い。Yさんと世間話をしたことも無い。
それはこのお店のピークが六時過ぎくらいで、いつも一番忙しい時間帯にわずかに空いたカウンター席に滑り込んでいたからなのです。
そして九州へ転勤することも特に告げずに姿を消したのです。

 

にもかかわらず私のことを覚えていてくれた。

 

その喜びに浸りつつ、最後に”熱燗”もう一本と”湯豆腐”をお願いし、この老舗酒場の雰囲気に抱きすくめられたのでした。

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2018.01.10

山口県宇部市。やはり市役所の近くに良い店あり。

夜の風もだいぶ冷たくなった今日この頃。先日は山口県の宇部市に宿泊しました。
北九州市から車で一時間ほどの距離にある宇部市は、毎月のように訪れているものの宿泊するのは年に一度か二度です。

宇部市のシンボルといえば世界的な化学メーカーである宇部興産の広大な工場。しかしその最寄駅であるJR宇部新川駅周辺の街は、あまりにも寂れているのです。
大きな工場の企業城下町にありがちなことではありますが、生産の海外移転やオートメーション化で、高度成長時代に比べると工場で働く人の数が何分の一にも減ってしまったことが主な原因でしょう。場所によっては昼間でも足を踏み入れることをためらってしまうような一角もあるのです。

そんな宇部の夜の街は、過去に何度かふらふらとさまよってみたものの、これというお店は見つからずじまい。
この夜はすでに時間も遅いし、車の運転で疲れたし、ラーメンとビールで済ませることに・・・。
のはずが、生ビールを2杯飲みほすころになると、

「せっかくの宿泊なのに、これで終わっていいのか?本当にそれでいいのか?」
という内なる声が聞こえてきます。
そんなわけでラーメン屋を出ると、自然にこれまであまり歩いたことの無いエリアの方へと歩みを進めます。
私の経験上、県庁や市役所など人の多い役所や、大きな病院の近くには落ち着いた感じの良いお店が見つかることが多いのです。


かなり歩いた後、宇部市役所の前へと到達しました。


Ube01_3しかし・・・。

ありゃ~。

周囲にはお店があることはあるのですがスナックばかり。
しかもほとんどのお店は看板に灯が入っていない・・・。

やはり今夜もダメか・・・。

と思った直後、真っ暗な通りの一角にほかと少し違う店構えのお店を発見しました。
Ube02 白い壁にスリットが入っており、そのスリットの奥には数々のグラスが並んでいます。
入り口近くに「竹」と書かれた小さな看板。
正面の壁は最近塗装されたようでもあるし、建物の裏のほうを見るとそのまま住居に続いているように見える。

悩む。

ちゃんとしたバーのようでもあるし、美容院かなにかであった店舗を改装して営業している”オバチャン・スナック”かもしれない。
さっきから見ていても客の出入りが全く無いので、店内の様子はわかりません。
入り口付近は照明が無く、開店前なのかもしれません。

しかしここまで歩いてきてしまったのだから、探検せずにホテルへ引き返すのももったいない。ひとしきり考えた結果、覗いてみることにしました。

こういうときに注意しないといけないのは、文字通り覗くように首から先に入ることです。勢いをつけて足から入ってしまうと体全体が店内に入ってしまい、

「ありゃりゃ、失敗した。」

と思っても引き返すことが出来ません。
首から入って覗き込めば、「すいません、間違えました」とか言って引き返すことも可能なのです。

木製の扉をよく見ると引き戸になっているようです。緊張しながら引き戸を開けてみます。

ガラリ・・・。

ワーオ!

Img_3332488 店内は中心に白木の美しいカウンターが置かれた、しっかりとしたバーの雰囲気。
先客はなし。四十代後半から五十代前半とおぼしきマスターが迎えてくれました。

まずは”ジン・トニック”をお願いし、改めて店内を観察します。

お店は比較的新しい感じですが、カウンターの厚さと美しさがただものではないことを物語っています。
ライムの香りをグラスの淵に丁寧に付けて作られたジン・トニックをいただきながら、マスターにお話を伺います。

非常に美しいカウンターは、その色や木目から日本の木材のように見えます。
店内には昔どこかで嗅いだことのある木の香りが薄く漂っています。

私:「この美しいカウンターは日本の木材ですか?」
マ:「はい、イチョウです。」
私:「ほぉ~それはスゴイですね。イチョウと言えば高級なまな板の材料ですよね?」
マ:「おお、よくご存知ですね。」
私:「実家の隣が神社でして、昔その神社のイチョウの大木の枝を伐採したときに、切り落とした太い枝を大工さんがまな板に加工して、近所の家に配ったことがあるんですよ。」
マ:「なるほど。」
私:「この木の香りも思い出しました。」
マ:「一生分の借金と引き換えに購入しました(笑)」

二杯目は”ホワイト・レディ”をオーダー。
シェイカーをセットするときに、それまでにこやかだったマスターの表情がキリリと締まったのが頼もしい。

聞けばこのお店は三年ほど前に開店。その前は小野田で長くお店をされていたそうです。
移転したのは宇部以上に寂れてしまった小野田ではさすがに商売が難しくなったという事情もあったようです。

マ:「カップルのお客様が一組しか入っていない夜は、(騒がしい客が入ってこないように)外の看板の灯を落としたりとかしていましたからね。」

というマスター。

素晴らしいお店というのはいつまでも記憶に残るもので、そんなお店に出会うと過去に行ったお店のことも思い出すものです。
この夜発見した「BAR 竹」で、いくつもの懐かしいお店を思い出しつつ、ゆったりとした時間を楽しんだのでした。

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2017.10.15

都城市の夜に、いぶし銀の星が二つ。  後編

都城市での二軒目は、小倉のbar raisinで教えていただいたお店へと向かいます。
調べてみたら電車で一駅、西都城駅の方にあるようですが、電車の本数は思ったより多くて一安心です。
その西都城駅へと移動し、駅前に設置された地図を見てみると、目的地が先ほどのお店で聞いた”一番の飲み屋街”である牟田町であることが判明。

ところが・・・・

目的地までの道のりは街灯もない真っ暗な道が続きます。
少し歩いたところでやっといくつか明かりが見えてきました。
とはいえあまり華やかとは言えない飲み屋街。その一角の、おそらくこの辺りではランドマーク的になっているものと思われる大き目の飲食店ビルに、目指したお店はありました。

Photo SHOT BAR トロアジェームオム

扉を開けると先客は無し。
まっすぐなカウンターとテーブル席が2つ。

マ:いらっしゃいませ
私:こんばんは。えっと・・・。
マ:どうぞ、真ん中へ。

まずは”ジン・トニック”をお願いしたところ実にシャープな味わいで喉越しがバツグン。

その味に、
「このお店、いい店だ。」

と確信し、改めて店内を見まわします。
バックバーには数百本のボトルが鎮座しています。
意外にも古いお店ではない様子で、マスターも重鎮クラスかと思いきや、お歳は60手前と思われる。

マ:ご出張か何かで?
私:ハイ、小倉から。向こうでraisinのマスターにこのお店を教えていただいたものですから
マ:あー、林さんね。そうですかそうですか。
私:”トロアジェームオム”とはどのような意味なんですか?
マ:「三番目の男」という意味なんですよ。
  一番がお客さん、二番目はバーの雰囲気、三番目にバーテンダー。
  私はそれで良いと思っているんですよ。


そんな会話をしつつ、二杯目は”ホワイトレディー”を注文。
独特な長く丁寧なシェイクの後に供されたカクテルは、やさしさを感じさせる味わい。

マスターによると、最初は現在と同じような普通のサイズのお店をやっていたのだが、その後しばらくして世の中の景気とともに経営を拡大。
かなり広いお店で人も何人か使って酒場を営んでいた時期もあったとか。
しかし結局は、自分の理想と違った方向へ向かっていることに気づき、数年前に原点に戻るようにして現在のお店を開いたそうである。

いぶし銀のマスターのお話を聞きつつ最後は”マティーニ”でキュッと締めたのでした。

めったに訪れることのない都城市。
そこで出会ったいぶし銀の酒場の主二人。

「何か理由を作って、また来たい。」

そう思わせる静かな街なのでした。

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2017.10.08

都城市の夜に、いぶし銀の星が二つ。  前編

01_2 宮崎県都城市。
JR日豊線で鹿児島市と宮崎市のちょうど中間にあるこの街には、なかなか訪れることがないであろうと思っていました。
鹿児島市や宮崎市ですら仕事はあまり無く、「遅くなって帰社できない」という理由で数年に一度宿泊する程度なのです。
なのでその中間点にある都城市に宿泊することはまず無いであろうと思っていたのです。

そんなある日、ふとしたことから都城市にある”霧島酒造”へ仕事で訪問することになったのです。

小倉から車で移動すること4時間半。
都城市の居酒屋に関する情報はゼロです。

ホテルで一息ついてから、とりあえず駅前へと行ってみます。
コンクリート造りでレトロな感じの都城駅。
その左側に小さな飲み屋街が広がっていました。
日没前の時間帯に通りをのぞき込むと、飲食店の看板はわりと近くまでしか連なっていません。

02 飲み屋街全体がたいした面積でもないことを悟りつつ、まずは隅から隅まで歩いてみます。
居酒屋、BAR、料理屋、スナック、etc
いろいろなお店がありますが、そろそろ開店する居酒屋形態のお店はどこも「入りやすい感じ」です。
店の前にその日のオススメメニューを張り出していたり、どんな食材・料理をメインとしているのか、ワイワイやるタイプなのか少人数向けなのかといったことがわかるような店構えのお店が多い。

しかしまぁ、都城といえばやはり焼酎の霧島になっちゃうんだろうなぁ・・・。

などと思いつつ探索していると、通りの角に小綺麗な店構えのお店を発見しました。
オーラを感じて近づいてみると、日本酒に力を入れていることがありありとわかります。
なかばあきらめていた日本酒メインのお店に心をときめかせつつ、もうすこし観察してみます。
「日本酒メイン」を掲げるお店には失敗例も多いからです。
 ・店主がウンチクを語り、押し付けてくる。
 ・そもそも銘柄の種類が少ない(販売店のいいなり)
 ・常連でガチガチに固められている。
などがその例です。

03最初は遠くから、そして徐々に近づいて見ていくと、窓の内側に並べられた一升瓶の銘柄に”南・純米吟醸””鍋島”などがあること、そしてそれらの一升瓶はこのお店の外観・内観と一体となるべく、建築の一部としてレイアウトされている(ようするに洒落た感じだ)ことに気づきました。

比較的新しそうな看板には「日本酒BAR 酒縁 本郷」とあります。

きっと良いお店だ。
そう確信し引き戸を開けます。

ガラリ・・・

いらっしゃいませ。

と、マスター。
髪はロマンスグレーで口ひげが似合っている。
文学や芸術にも触れていて、間違っても客に酒のウンチクを押し付けたりはしないタイプに見える。
店内はBARというよりは普通の和食のお店の雰囲気で安心できる。
先客は無し。

私:えっと、どこでもいいですか?
マ:はい、どこでもお好きなところへ。

まずは”生ビール”をお願いし、さっそくメニューに目を走らせます。
日本酒は奇をてらったようなものはなく、基本的なところが充実している。
ツマミ類も塩辛系から干物、腹にたまるものまで揃っていて文句なしだ。

まもなく女将さんの手によって”生ビール”と”お通し”が到着。
お通しはチクワに手を加えたものやキビナゴの干物など三品が上品に並んでいる。

見慣れない客を出張サラリーマンと見抜いたマスター。

マ:失礼ですが、どちらから?
私:小倉からです。
女将:お仕事ですか?
私:ハイ、明日霧島酒造さんへ。
マ:ホウ、霧島さんの関係ですか。
私:関係といいましても、設備の方(酒の販売ではなくて)です。
マ:ああ、それじゃあ今建設中の・・・。
私:そうです、バイオマス発電の・・・。
女将:すごい規模で工事していますね。私、出勤のとき毎日霧島酒造さんの前を通ってくるんですよ。

「私たち」と言わないところを見ると、マスターと女将さんは夫婦ではないのかな?
などとどうでもよいことを考えつつ、日本酒へ移行します。
まずは”天狗舞”と、ツマミに”ツブ貝ワサビ”をお願いします。

んー、やはり落ち着くなぁ。日本酒は。

マ:普段はどのような日本酒を?
私:地域でいえば静岡のお酒が好きです。あと山形も。
マ:静岡のお酒はなかなか手に入らないなぁ

というわけで二杯目は”山形正宗

女将:霧島酒造の社長さんもいらっしゃるんですけど、案外日本酒好きなんですよ(笑)
私:へぇ~、そうなんですか。まぁさすがに自社のものばかりでは飽きるでしょうからね。

最後に”鍋島”をぬる燗でお願いし、同時に”朝取れ鶏のタタキ”も注文します。

ぬる燗でいただく”鍋島”と、旨みたっぷりの鶏のタタキに思わず笑みがこぼれる。

マ:都城は初めてですか?
私:ええ、初めてです。この辺りが飲み屋街の中心なんでしょうか。
マ:この辺りはスナックとかも全部合わせて100軒くらいで、少し離れた牟田という地域が500軒くらいでしょうかね。

落ち着いた店内でゆっくりと流れる時間を楽しみつつ、初めての街でまた一軒良いお店を発見した喜びに浸るのでした。

後編へ続く。

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2016.12.03

山口県周南市。やっと見つけたいいお店。

山口県周南市。
この街に訪れるようになって九年目になります。しかしこれまでかなり探検したにもかかわらず、コレという居酒屋に出会うことが出来ずにいました。

地元の人が、
「三十年前は東京より人が多かった。」
と言う駅前のアーケードはすっかり寂れてしまい、いわゆるシャッター商店街です。

夜になれば意外に多くの飲食店が軒を連ねるものの、この街の特徴は何しろ単価の高いお店が多いこと。
聞くところによると大手企業の主力工場が立ち並ぶため、バブル時代には持て余した接待費で飲む人が大量に訪れ、勢いお店の方も単価を上げた名残なのだとか。
結局のところ地元は人口減、出張などで外から来る人間は外に飲みにいかないということになってしまったようです。

押し黙ったような夜の街。

それでも年に数回の宿泊時にはアチコチ歩き回り、昨年の秋ごろやっと良いお店を見つけたのです。

飲み屋の灯もそろそろ途切れ途切れとなり、住宅やオフィスが多い暗がりに入ろうかという境界線のあたりに、そのお店「豆福」はありました。(良いお店はだいたいこのような場所にあるようです)
Photo 暗い通りにほのかにこぼれ出る暖かい照明。
入り口付近に置かれた看板には小さめの字で「本日のオススメ料理」。
端の方には日本酒の紙箱がいくつか置かれています。
料理はどれもひと手間かかっていそうな感じだし、日本酒の紙箱の置き方や数は控えめながら、銘柄はしっかりとしている。

むぅ、これは期待できる。

そう確信して初めて入った夜のことを思い出しつつ、この夜も扉を開けました。

カウンター4席と他にテーブル席。
これらをすべてを合わせて10席と小さなお店です。

「あっ、いらっしゃい。」と小柄でいつもニコニコしている大将。
私:「寒くなりましたね。」
大:「そうですね。いつもご出張の度に寄っていただいてありがとうございます。」

まずは”キリン・クラッシックラガー”の小瓶と、ツマミは”生湯葉わさび醤油”。
カウンターの上の壁には日本酒のラベルがびっしりと貼り込まれ、その中には最近貼られたらしきものもいくつか・・・。
こんなところにも研究を怠らない店主の姿勢が表れているような気がします。

ビールで喉を潤したら、湯葉の歯応えを楽しみつつ、温かい料理を探します。

私:「”海老芋と椎茸の揚げだし”の海老芋というのはなんですか?」
大:「海老芋というのは京都のお芋で、里芋の大きいようなものです。」
私:「ホウ、ではそれをお願いします。」

里芋は私の大好物の一つ、良いお店ではいろいろと波長が合うものです。

お酒は最初はスッキリ目を期待して”菊姫・山廃純米 鶴乃里”を選択。

「熱いですよ」と供された、”海老芋と椎茸の揚げだし”はボリュームもそこそこあり、海老芋を箸で分けながらモグモグと味わいます。
確かに里芋の一種だとうなずきながら”菊姫”をスッと。
糸を引くような香りが残る銘酒を口に含むたびに、石川のお酒に外れは絶対にないことを確認。
そして早くも次のお酒の検討に入ります。
オススメの日本酒メニューから選んだのは”雪の茅舎”

大:「飲んでいただきたいと思っていたお酒をピンポイントで選んでくれますね(笑)」
私:「昔は仕事で秋田(雪の茅舎の産地)によく行っていたものですから。」

海老芋をたいらげ、あとはゆっくりと飲みたいと思い、定番のオツマミから”牛肉のしぐれ煮”を選択。
ピリリと山椒の効いたその味に合わせるのは、”貴・特別純米 ふかまり”をぬる燗で。

静かな店内で美味しいお料理と日本酒を楽しみ、体も暖まったところで二軒目へと向かうことにしました。

大:「このあとはウィスキーですか?」とまたニコニコ。
私:「ハハハ、図星です。」

と答えてBARへと向かったのでした。

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2016.01.24

昼酒の幸せ 「そば切り からに」

先週は金曜日に大阪への出張。
寒い寒い朝5時に起床し、夕方まで3つの会議、夜は夜で会社飲み会と、体力的になかなか厳しい一日なのでした。
その夜は日付が変わってから梅田のカプセルホテル「大東洋」に潜り込みました。
「カプセルホテル大東洋」は、チェックアウトが12時と遅いのがありがたい。翌朝は遅めの起床です。

向かったのは梅田から一駅、福島という駅を降りた静かな商店街。
福島聖天通商店街は、一直線に長く続く商店街なのですが、商店以外にも居酒屋、BAR、洋食屋さんなど食事系のお店も多く、しかもどのお店もなかなかの雰囲気。
特に居酒屋関係は、日本酒に力を入れていることが開店前の時間帯でもわかるほどです。

1その静かな商店街の一番奥に、「そば切り からに」はヒッソリと佇んでいます。

引き戸を開けて入ると、まだ先客は無し。
イカツイ感じのご主人と、明るく美人の奥さんが迎えてくれます。

奥さんに、「どちらでもどうぞ~~。」
と促されて、真ん中の大きなテーブル席のひとつに腰掛けます。
まずは”ハートランド”をお願いして一息。
2ごく薄いグラスでいただく午前中からのビール。

至福の瞬間です。

静かな店内には古民家の廃材などを美しく蘇えらせたテーブルや椅子、棚などが据えられ、それらの微妙な木目や古い傷などが目を楽しませてくれます。
ハートランドを飲み干したら、”子持ちコンニャク”と日本酒をお願いします。
お酒はお店にお任せで順番に出てくるシステムとなっていて、この日の一杯目は石川県の”手取川”です。
プルルンとした子持ちコンニャクにスッキリとした手取川。
ゆっくりと味わっていると、徐々に他のお客さんもやって来ました。
ほとんどの客はまずお酒を注文するという本格派で、皆節度を持って飲んでおられます。

3お次は”豆腐のもろみ漬け”をお願いしました。
濃厚なお味で少し冷たくしてある”豆腐のもろみ漬け”は、いうまでも無く日本酒を友とせねばなりません。
お酒は”陸奥八仙”が登場しました。
お酒が片口で供されるのもこのお店の素敵なところ。
どこかの古道具屋で仕入れているらしい酒器たちも魅力的です。

あぁこのすばらしい雰囲気のお店にもっと浸かっていたい。

そんな気持ちになりもう一品。”にぎり天”とお酒は”国権

4最後にお蕎麦は”かも汁せいろ”の細切り。
蕎麦から漂う香りもすばらしいが、細切りの角のシャープさがこれまた素晴らしい。

寒い冬空の下を歩いて帰るのに備え、最後はかも汁を熱~い蕎麦湯で割っていただきました。

いつか大阪に住むなら、絶対にこの町に住みたい。
そんな思いを胸に帰りの新幹線へと向かったのでした。


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2015.11.01

熊本の夜。大満足で二夜連続

先週は久々に熊本へ出張してきました。
夕方に新幹線で移動して先乗りしていた若手社員Nと合流。Nが予約していたはずのビジネスホテルへ向かいますが、Nの手違いで予約はされておらず、しかもホテルは満室。
そこで急遽カプセルホテルへと向かいます。

「スイマセン・・・」とうなだれるNですが、カプセルホテル好きの私としてはなんら問題ありません。そそくさとチェックインを済ませて繁華街へと向かいます。(ほとんどのカプセルは繁華街の直近にあるものなのです)

某口コミサイトで本日のお店を決めようとするNを、
「ダメダメ、そんなのまったく当てにならないから。」
と制し、自らのアンテナを働かせながら歩いていきます。

建ち並ぶ飲食店ビル。
大きなお店が入っている建物はスルーして、小さなお店が集まっていそうなビルを一つ一つチェックしていきます。
ビル内の路地ともいえるような通路を覗き込むと、居酒屋、寿司屋、スナック、パブ、カフェなど様々な種類のお店が集まっていて、歴史のある観光都市ならではの味わいが感じられます。

そんなビルのひとつ。
Photo_3奥の方を覗き込むと一番奥に良さそうな感じの扉が・・・。
あらためて入り口付近を見ると、「郷土料理のお店です」と手作り風のボードと、手書きの「今日のオススメメニュー」。
この手の手作り看板のデキというのはお店を判断する重要な要素であって、完全シロート手作り風のチャチなのを貼っているお店はダメ。逆に業者お仕着せの味気ないものもダメ。
このお店は”デザインの心得がある友達にお願いした”感じ(あくまで想像ですが)であり、手書きの文字も丁寧で好感がもてます。
ビルの壁に取り付けられた正式な看板には”馳走庵 ばあば”とあります。
「馳走」という単語からは、美味しい食べ物のあるお店であろうことが、
「庵」という文字からは、それほど広くないお店であることが想像されます。

私:「ここだ、ここにしよう。」

奥の扉を開けると、5席くらいのカウンターと、テーブル席が3つほどの店内。
先客はなし。
白い割烹着の女将さんが、「どこでもどうぞ~」と促してくれるので、私とNは奥のテーブル席へ腰を落ち着けます。

そしてまずは”生ビール

私:「あーウマい。ホテルが変わったおかげで歩いたから余計にウマい。」
N:「スンマセン・・・。」
私:「別にいいよ、オレはカプセル好きだし。」

などと話しつつ、せっかくなので熊本名物を注文します。
”馬刺しの盛り合わせ””辛子レンコン”をお願いします。
すると女将さんが、
「辛子レンコンはこれから揚げるので少し時間が掛かりますがよろしいですか?」
我々:「いいですとも、いいですとも。」

(そうか、辛子レンコンというのは揚げて作るのかと初めて知る)
私:「念のため、エ~ット、すぐ来そうな”ポテサラ”もお願いします。」

早速出てきた”ポテサラ”をいただくと、フワフワした食感にしっかりとした味。
もちろん手作りです。

Photoツヤツヤの”馬刺し盛り合わせ”が来るころには”生ビール”も二杯目が終わろうとしていました。
あらためて店内を見回すと、カウンターには四十代後半とおぼしき男性客と、二十代後半から三十代前半と思われる女性客が、それぞれ一人でカウンターの両端に。
大将は相川翔に似た感じで、一人客の相手をしながら働いています。

ん~、やはりいい店だ。
店もよいが客層も良い。


壁を見ると生ビールは三杯目からジョッキが「大」になると書いてある。
もちろん三杯目をお願いし、まもなく”辛子レンコン”が出てきました。
Nが早速口に運びガブリ。

N:「ウマイ!ウマいっすよコレッ!」
私:「どれどれ・・・、オオッ!確かにウマいッ!」


Photo_2ほのかな温かさに、上品な辛味が味覚中枢を直撃します。
正直なところ辛子レンコンというのは、辛いばかりで特に好物ではなかったのですが、このお店の辛子レンコンは激ウマです。
これを頂いたらもう高速のサービスエリアで売っている辛子レンコンは食べられません。
もちろんビールとの相性もバッチリデす。

私:「あの~、日本酒とかもあるんですか?」
女将さん:「ありますよ、え~と、熊本のお酒ですと”泰斗”というのがあります。」
私:「それ、お願いします。」


つまみは”おにしめ”(里芋や野菜を煮たもの)で、地元のお酒を味わいます。
日本酒は他にも山形の”ばくれん”など数種類を置いてあって、これまた十分に楽しめます。
聞くところによると「ばあば」という店名は「おばあさん」という意味で、以前は大将のお母さんがメインでやっていたのだとか。
現在も”おにしめ”などの家庭風料理はお作りになっているようです。

帰り際に大将に、「明日も来るからね。」
と言い残し、実際に翌日の夜も訪れ、しかも前日とほとんど同じものを注文したのでした。

記憶の中にいつまでも確実に残るお店。
そんなお店を見つけることも、出張の醍醐味なのです。


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2014.08.15

お盆の長旅その2 仙台

今回の帰省ではたまたま日程が仕事と重なったため、小倉~新大阪間の交通費は会社の経費でまかなわれています。
その浮いた交通費を東京~仙台間へと投入したのです。

ホテルに到着し荷物を降ろすと、懐かしの仙台の街へと歩き出します。
久々に訪れた仙台。ウワサには聞いていましたが、震災の復興関連で人が集まっているためかなりの賑わいです。
九州へ転勤する前はほぼ毎月訪れていましたが、その前後から小さな横丁の再開発なども始まっていただけに、いまはどうなっているのか少し心配です。

2あったあった、文化横丁
照明の明るいアーケードから一歩入ると、薄暗い横丁には昔と同じで味わい深い感じのお店が連なっています。「月のうさぎ」「高山酒場」そして「源氏」。記憶の中に閉じ込められていたお店たちは、大部分が昔と変わらず看板を掲げています。なつかしいなぁ~。

一安心したら一番の繁華街である国分町方面へと向かいます。
夜の街も相当な人出ですが、ネオン街の看板を見ている間に昔の土地勘も戻ってきました。
Photoひとまず虎屋横丁と稲荷小路の交差点へと到着。
国分町のランドマークといえば、この交差点か凱旋門ビルでしょう。
交差点からすぐ近くに、今回お目当てのお店である「BAR THE ROTHKO」があります。
以前は文化横丁の地下にあって、いわゆる隠れ家的な要素のあるお店だったのですが、ビルの三階に移転したということはおそらく雰囲気も少し変わっているかもしれません。

エレベーターを降りるとガラスの扉。
その扉を開けると、早速マスターのMさんが出迎えてくれました。

マ:「オーッ、FUKAWAさん待ってましたよ。」

私:「久しぶりですね、六年ぶりかなぁ。」

Photo_2まずは”ジン・トニック”をお願いして店内を見渡します。
スタイリッシュなカウンターと照明。早い時間帯であるためか、他のお客さんはいません。

私:「ビルの三階のお店らしい雰囲気ですね。」

マ:「まぁネ、最初はいろいろ言うお客さんもいましたけれど。」

東北最大の歓楽街である国分町のど真ん中で、Mさんは理想のお店を具現化したのだろう。出世したMさんとお店に、胸の中で拍手です。

続いて”ホワイトレディー”をお願いすると、シェイカーを耳に近づけて音を聞き分けながらのシェイク。そのスタイルは昔と同じで変わっていない。
会話の中でも、「まぁ大人がお酒を飲みに来る所ですからね。その辺はお互いわかってもらわないと。」とか「自分、組織とか苦手なんッスよ」と、考え方も昔とちっとも変わっていない。

2_2ひとしきりおしゃべりした後、”雪国”をお願いすると、見たことがあるようなグラスが・・・

私:「銀座のモーリバーみたいなグラスですね。」

マ:「そうです、毛利さんところのオリジナル。自分は通販で買いましたけど(笑)」

私:(笑)

Photo_3久々に訪れた仙台の街。
最後はこれまたあのころと同じく、「姫らーめん」で〆たのでした。(そして今回もまた、なぜ”姫”なのかを聞くのを忘れてしまったのでした)



Photo_4追伸
翌日は仙台のボルダリングジムでひと汗流して、ようやく実家へと向かったのでした。






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2014.08.14

お盆の長旅その1 東京

今回の帰省は、まず仕事がらみの出張があり、そのまま実家に戻るという交通費節約コースです。

1日目:小倉→徳山→倉敷
2日目:倉敷→大阪(ココまで仕事)→東京
3日目:東京→仙台
4日目:仙台→実家(神奈川)

という行程で、JRは西日本・東海・東日本が混合し、途中でレンタカーも借りるという本格的な出張&帰省。
昔はこの程度の出張の段取りはホイホイと組んでいたのですが、久々ということもありキップやホテルの予約を何度も確認。
少々ドキドキしながらの出発となりました。

一夜目、初の宿泊で期待していた倉敷は運悪くガッカリ。
一軒目に飛び込みで入った居酒屋は、この夜たまたまだと思うのですが異様に声の大きい団体客が入っており落ち着かず、二軒目に目指したバーも、接客面がどうもいまひとつ。期待はもろくも崩れ去ったのでした。

Photoいろいろワケありな感じなネーミングの、古い商店街を発見したのが唯一の救いです。





気を取り直して翌日は倉敷から大阪、そして東京へ移動し、馴染みのバーを二軒定期訪問。
十分に満足してカプセルホテルへと転がり込んだのでした。

Photo_2翌朝目覚めると、生暖かい風の中向かったのは「眠庵
カウンター席へうながされると、まずは”ハートランド”と”牛肉と大根のバーボン煮”を注文。
小さめのコップでグイッと飲むと、ハートランドの切れがのどを潤してくれます。
準備運動が済んだら”自家製お豆腐”を注文。
自家製のお豆腐は出来立てホヤホヤの温かいのも良いですが、この日のように冷えて少し締まったのもヨロシイ。お酒はこのお店の主軸である”喜久酔 普通酒”で、気分は東京勤務時代へとタイムスリップです。

お豆腐をチビチビやりながら、お酒は二杯目の”小夜衣 純米吟醸”へと移行。
スッキリしてのど越しのよいお酒が、山奥の小さな滝のようにスルスルと胃袋へ流れ落ちます。
Photo_3お次は”イカ(小)”をお願いし、合わせるのは”杉錦 純米吟醸無濾過生原酒”この日のイカにはいつも以上にワタが入っていて、切れ目からジュクジュクと溢れ出てくるほどです。それを日本酒でキュッと流す。

たまんねぇ~。

濃厚なイカのワタは、口の中に軽い痺れをもたらしますが、舌の痺れを癒すように日本酒がしみ込んできます。
Photo_4最後に盛り蕎麦の”二種盛り”をお願いし、産地の違う御蕎麦の香りをクンクンと嗅ぎ、

「眠庵だなぁ~」

と極めて当たり前な感慨に浸ります。
時刻は二時半。
お店も少し暇になってきたところで、店主のYさんと話でもしようかと思いましたが、今回はここで終了。
本格的に酔っ払わないうちに仙台へと向かったのでした。

※お酒の細かいグレードは一部忘れてしまったので不正確です。

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